「NASとクラウド、どっちが安いんだろう…」そう思って価格を調べても、初期費用だけ見て判断してしまい、5年後に気づいたら想定の2倍以上のコストになっていた──。実はこれ、多くの小規模企業が陥る失敗パターンです。月額料金の積み重ねや、見落としがちな電気代が、長期的には数十万円単位の差を生み出すからです。
本記事では、2025年11月時点の最新実売価格と消費電力データを徹底調査し、5年間の総所有コスト(TCO)まで詳細に試算しました。NAS本体の価格比較、機種別の電気代(旧型は年間1.3万円、新型は5,400円など)、クラウドサービスの月額料金、そしてバックアップにかかる費用まで、意思決定に必要なすべての数字を網羅しています。
この記事を読めば、「安い」と思って選んだ旧型NASが実は5年で3.8万円も高くつく理由や、4TBで5ユーザーなら5年間でNAS約20万円・クラウド約82万円という60万円以上の差が明確に分かります。さらに、業務形態別の最適な選択方法、ハイブリッド運用の実践法まで、あなたの会社に最適なストレージ戦略を見つけられます。
💡 結論を先に言えば、データ容量2TB以上で長期運用ならNAS、リモートワーク中心ならクラウド、そして重要なのは「初期費用」ではなく「電気代を含めたTCO」で判断することです。
NASとクラウドストレージの違いをわかりやすく解説
NASとクラウドストレージの詳細比較
| 比較項目 | NAS | クラウドストレージ |
|---|---|---|
| 設置場所 | オフィス内の物理的な場所 | データセンター(外部) |
| アクセス方法 | LANケーブル・Wi-Fi経由(社内ネットワーク) | インターネット経由(場所を問わない) |
| 管理責任 | 自社での管理が必要(停電対策、バックアップ、メンテナンス) | サービス提供企業が管理(24時間365日体制、自動バックアップ、定期メンテナンス) |
| 主なメリット | 大容量データの一元管理、高速アクセス、初期費用のみ | どこからでもアクセス可能、運用負担が少ない、専門的な管理体制 |
それぞれの仕組みと特徴
NASとは具体的に何か
会社のデータを保存・共有するための専用機器がNAS(Network Attached Storage)です。簡単に言えば、ネットワークにつながる大容量の保管庫のようなものです。オフィスに設置した本体に大容量のハードディスクが内蔵されており、社内のパソコンからLANケーブルやWi-Fi経由でアクセスできます。
💡 データの保存場所として選ばれる主な理由:
- 大容量のデータを一元管理できる
- 初期費用のみで容量無制限に使える
- 社内限定で高速アクセスが可能
NASは、USBで接続する一般的な外付けHDDとは異なり、ネットワーク接続することで複数の端末から同時にアクセスできるという大きな特徴があります。これにより、ファイルの共有や共同作業がスムーズに行えます。
クラウドストレージとは具体的に何か
クラウドストレージは、インターネット上のサーバーにデータを保存するサービスです。GoogleドライブやDropboxのような一般向けサービスの法人版だと考えるとわかりやすいでしょう。データは専門企業が管理する大規模なデータセンターに保管され、インターネットさえあれば、どこからでもアクセスできます。
💡 サービスとして選ばれる主な理由:
- 場所を問わずアクセスできる
- 専門企業による安全管理が期待できる
- システム管理の手間がかからない
クラウドストレージでは、データは物理的に遠隔地にありますが、専用アプリケーションやWebブラウザを通じて、まるで自分のパソコン内のファイルのように操作できます。多くのサービスでは自動同期機能により、更新されたファイルが自動的にクラウド上に反映されます。
設置場所と管理方法の違い
オフィスの机の上に置かれるNASと、データセンターにあるクラウドストレージでは、管理方法に大きな違いがあります。NASは社内で物理的に管理する必要があり、停電対策やバックアップなどの運用管理は全て自社で行います。一方、クラウドストレージはサービス提供企業が24時間365日体制で管理を行うため、社内の管理負担は大幅に軽減されます。
🔧 基本的な管理の違い:
- 設置場所:NASは社内、クラウドは外部のデータセンター
- 管理主体:NASは自社、クラウドはサービス提供企業
- 必要な作業:NASは物理的な管理も必要、クラウドは利用管理のみ
この管理方法の違いは、導入・運用コストだけでなく、セキュリティや災害対策にも大きく影響します。NASは自社で設置・管理するため細かなカスタマイズが可能ですが、その分の手間も発生します。クラウドストレージは管理の手間は少ないものの、サービス提供企業のポリシーに依存する部分があります。
主なメリット・デメリット
NASのメリット・デメリット
社内にデータ保管場所を持つNASは、高速アクセスとコストメリットが大きな特徴です。一方で、運用管理の手間や災害リスクへの対策が必要です。
✅ NASを選ぶ企業の決め手となるメリット:
- 大容量データの読み書きが高速
- 一度の投資で長期間使用可能
- 通信費用がかからない
- インターネット接続なしでも利用可能
⚠️ 注意が必要なデメリット:
- 故障時の対応は自社対応が必要
- 災害時のデータ消失リスクあり
- 社外からのアクセスには追加設定が必要
- バックアップ作業は自社で実施
NASは特に社内LANを活用した高速なデータ転送が魅力で、大容量の設計データや動画編集データなどを扱う企業に適しています。また、インターネット環境に依存せず社内だけで完結するため、セキュリティ面での安心感もあります。一方で、物理的な機器であるためハードウェア故障のリスクがあり、定期的なメンテナンスや適切なバックアップ体制が必要です。
クラウドストレージのメリット・デメリット
クラウドストレージは、運用の手軽さと柔軟なアクセス環境が特徴です。ただし、通信速度や月額コストについては考慮が必要です。
✅ クラウドを選ぶ企業の決め手となるメリット:
- 社外からでも簡単にアクセス可能
- システム管理の手間が最小限
- 自動バックアップで安心
- 必要な分だけ容量を利用可能
⚠️ 注意が必要なデメリット:
- 月額費用が永続的に発生
- インターネット環境が必須
- 大容量データの読み書きに時間がかかる
- サービス終了のリスクあり
クラウドストレージの最大の魅力は場所を選ばない柔軟なアクセス環境です。テレワークやモバイルワークなど、多様な働き方を実践している企業にとって大きなメリットとなります。また、自動バックアップやバージョン管理などの機能も充実しているため、データ保護の安心感があります。ただし、インターネット接続に依存するため、通信環境が不安定な場所ではアクセスが困難になる可能性があります。
実際の利用シーンでの比較
代表的な利用シーンにおける、NASとクラウドストレージの特徴を比較してみましょう。
| 利用シーン | NAS | クラウドストレージ |
|---|---|---|
| 社内でのファイル共有 | ◎ 社内LANで高速転送、大容量データも快適(初期設定が必要) | ○ 設定が簡単、すぐに利用開始可能(大容量データは転送が遅い) |
| 在宅勤務でのアクセス | △ VPN設定が必要、専門知識が必要(設定後も動作が不安定なことも) | ◎ どこからでもアクセス可能、設定不要、安定した動作 |
| 取引先とのデータ共有 | △ 専用の共有設定が必要、都度設定に手間(セキュリティ設定が複雑) | ◎ URLで簡単共有、アクセス権限の細かい設定可能、共有履歴の管理が簡単 |
| システムバックアップ | ○ 大容量バックアップが高速(バックアップ設定は手動、定期的な動作確認が必要) | ◎ 自動バックアップ、バージョン管理が簡単、復元作業も容易 |
このように、社内での大容量データ運用ではNASが、場所を問わない柔軟な利用ではクラウドストレージが優位となることがわかります。自社の主な利用シーンに合わせて選択することで、より効果的な運用が可能になります。
NASとクラウドストレージの初期費用を比較
企業での利用に適した信頼性の高い製品やサービスを選んだ場合の初期費用をご紹介します。
NAS本体の実売価格(2ベイ・4ベイ)
Buffalo TeraStationシリーズの実売価格
Buffaloの主力モデルはTS3230DNシリーズ(新世代)とTS3220DNシリーズ(旧世代)があり、市場には両方が流通していますが、電気代の差を考慮すると新世代モデルの選択が推奨されます。
| モデル | 容量 | 実売価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| TS3230DN0202 | 2TB | 約9.7万円 | 新世代・省電力 |
| TS3230DN0402 | 4TB | 約10.7万円 | 新世代・省電力 |
| TS3420DN0804 | 8TB(4ベイ) | 約12.7万円 | 旧世代・高消費電力 |
| TS3430DN0804 | 8TB(4ベイ) | 約15.5万円 | 新世代・省電力 |
Synology DiskStationシリーズの実売価格
Synologyはディスクレス(HDD別売り)での販売が基本です。本体価格に加えて、HDDの購入費用が別途必要となります。
| モデル | ベイ数 | 実売価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| DS225+ | 2ベイ | 約5.4万円 | 2.5GbE対応・最新モデル |
| DS425+ | 4ベイ | 約7.6万円 | 高拡張性・最新モデル |
⚠️ 重要な注意点:ディスクレスNASの総コスト
Synologyを選ぶ場合、HDD費用を忘れずに計算しましょう。例えば、DS425+に8TB HDD×4台(Seagate IronWolf)を搭載する場合、本体7.6万円+HDD約9.2万円(2.3万円×4)=総額約16.8万円となります。
クラウドストレージの初期費用
クラウドストレージは初期費用0円のサービスがほとんどです。ただし、NASは一度購入すれば容量の上限まで追加料金なしなのに対し、クラウドストレージは使用量に応じて月額料金が変動する点に注意が必要です。
💰 導入時に必要な費用の違い:
- NAS:本体費用6〜16万円+設定費用0〜3万円
- クラウド:初期費用0円(月額料金のみ)
容量別の導入コスト目安
初期投資として必要な金額を容量別に比較すると、以下のようになります。
| 必要容量 | NAS導入費用 | クラウド導入費用 |
|---|---|---|
| 2TB | 6〜10万円 | 0円(月額発生) |
| 4TB | 8〜12万円 | 0円(月額発生) |
| 8TB | 12〜17万円 | 0円(月額発生) |
NASは導入時に信頼性の高いメーカー製品を選ぶことが重要です。特に業務利用では、データの安全性を高めるRAID機能を備えたモデルがおすすめです。小規模事業者であれば2ベイ(HDDを2台搭載可能)、データ量が多い場合は4ベイ以上のモデルが適しています。
NASの電気代とランニングコスト
NASは24時間稼働を前提とした場合、電気代が継続的に発生します。この運用コストは、機種によって年間で数千円から1万円以上の差が生じるため、長期的なコスト計算において無視できない要素です。
機種別の消費電力と月額電気代
電気料金は31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会の新電力料金目安単価)を基準に試算しています。
Buffalo TeraStationシリーズの消費電力
| モデル | 動作状態 | 消費電力 | 月額電気代 |
|---|---|---|---|
| TS3220DN(旧) | データ転送時 | 57W | 約1,290円 |
| アイドル時 | 48W | 約1,090円 | |
| TS3230DN(新) | データ転送時 | 29W | 約660円 |
| アイドル時 | 20W | 約450円 |
Synology DiskStationシリーズの消費電力
| モデル | 動作状態 | 消費電力 | 月額電気代 |
|---|---|---|---|
| DS225+ | アクセス時 | 17W | 約385円 |
| ハイバネーション | 6W | 約140円 | |
| DS425+ | アクセス時 | 28W | 約640円 |
| ハイバネーション | 6W | 約140円 |
年間・5年間の電気代試算
24時間365日稼働させた場合の電気代を試算すると、機種選定の重要性が明確になります。
| モデル | 年間電気代 (アイドル時想定) | 5年間の電気代 |
|---|---|---|
| Buffalo TS3220DN(旧) | 約13,035円 | 約65,175円 |
| Buffalo TS3230DN(新) | 約5,431円 | 約27,155円 |
| Synology DS225+ | 約4,611円 | 約23,055円 |
| Synology DS425+ | 約7,672円 | 約38,360円 |
旧モデルと新モデルのコスト差
⚠️ 重要:「安い旧モデル」が実は高くつく理由
BuffaloのTS3220DN(旧)とTS3230DN(新)を比較すると、本体価格差は約1〜2万円程度ですが、5年間の電気代差は約3.8万円に達します。つまり、在庫処分で安く販売されている旧モデルを購入しても、運用コストを含めた**総所有コスト(TCO)**では新モデルの方が安くなります。
💡 省電力モデルを選ぶべき理由:
- 年間約7,600円の電気代削減
- 5年で約3.8万円のコスト差
- 本体価格差を上回る節約効果
Synology製品は設計段階から省電力性能を重視しており、特にハイバネーション機能(HDDをスリープ状態にする)を活用することで、夜間や休日のアクセスがない時間帯の消費電力を極限まで抑えることができます。
クラウドストレージの月額費用
クラウドサービス市場では、AI機能の実装コストや為替変動を背景とした価格改定が継続的に行われています。各サービスの料金体系を正確に把握しましょう。
Google Workspaceの料金プラン
Google Workspaceは、日本円での価格設定が固定されており、為替レートの短期的な変動の影響を直接的には受けにくい構造となっています。
| プラン名 | 月額料金(1ユーザー・税抜) | ストレージ容量 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| Business Starter | 880円 | 30GB | Gmail、カレンダー、Meet(100名) |
| Business Standard | 1,760円 | 2TB | 共有ドライブ、Meet(150名) |
| Business Plus | 2,750円 | 5TB | eDiscovery、高度なセキュリティ |
💡 プラン選択のポイント:
- Starter:個人事業主レベル向け(共有ドライブ不可)
- Standard:組織的なデータ管理が必要な企業向け(推奨)
- Plus:高度なセキュリティとコンプライアンスが必要な場合
上記は「年間プラン(月額払い)」等の割引適用後の価格である可能性があり、契約期間の縛りがない「フレキシブルプラン」の場合、価格は割高になる傾向があります。また、消費税10%が別途加算されます。
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Microsoft 365の料金プラン
Microsoft 365は、2025年4月に一部プランの価格改定が実施されており、グローバル価格(USD)を基準に設定されることが多いため、為替レートの影響を受けます。
| プラン名 | 月額料金 (1ユーザー・税込目安) | ストレージ容量 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| Business Basic | 900〜1,100円 | 1TB | Web/モバイル版Officeアプリ |
| Business Standard | 1,900〜2,200円 | 1TB | デスクトップ版Officeアプリ付属 |
💡 ライセンスの適正配置がコスト削減の鍵:
- デスクトップ版Officeが必要な社員:Standard
- Web版で十分な現場スタッフ:Basic
Dropbox Businessの料金プラン
Dropbox Businessは、ファイル共有と同期のスピードに特化しており、クリエイティブ業界等での支持が厚いサービスです。
| プラン名 | 月額料金 (1ユーザー) | ストレージ容量 | 最低契約人数 |
|---|---|---|---|
| Standard | 約2,400〜2,700円 | 5TB | 3名以上 |
| Advanced | 約3,800〜4,300円 | 15TB〜 | 3名以上 |
⚠️ Dropboxの注意点:最低3ユーザーからの契約が必要であるため、最小構成でも月額約7,000円〜のコストが発生します。単なるバックアップ先としてではなく、社外との頻繁な大容量データ授受が必要なワークフローにおいてその価値を発揮します。
NASとクラウドのバックアップ費用
データの確実な保護のため、それぞれに適したバックアップ方法と、それにかかるコストを理解しておきましょう。
NASのバックアップ方法とコスト
NASのバックアップには、主に以下の方法があります。
🔄 主なバックアップ方式:
- 内蔵HDDの冗長化(RAID構成):追加コストなし(本体購入時に含まれる)
- 外付けHDDへの定期バックアップ:1〜3万円(HDD代のみ)
- 別のNASへの自動バックアップ:6〜10万円(2台目のNAS代)
- クラウドバックアップ(ハイブリッド方式):月額数千円〜
RAID構成による保護
RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数のHDDを組み合わせてデータを保護する技術です。追加費用なしで実現できる基本的なバックアップ方法です。
| RAID種類 | 必要HDD数 | データ保護レベル | 実効容量 |
|---|---|---|---|
| RAID 1 | 2台以上 | 1台故障まで保護 | 50%(完全ミラー) |
| RAID 5 | 3台以上 | 1台故障まで保護 | 67〜75%程度 |
| RAID 6 | 4台以上 | 2台故障まで保護 | 50〜67%程度 |
外部媒体へのバックアップコスト
定期的に外付けHDDへバックアップを取る場合の費用:
| バックアップ容量 | HDD価格 | 運用コスト |
|---|---|---|
| 2TB | 約1.3〜1.5万円 | 実質0円(買い切り) |
| 4TB | 約1.7〜2.0万円 | 実質0円(買い切り) |
| 8TB | 約2.3〜3.3万円 | 実質0円(買い切り) |
クラウドの自動バックアップ機能
クラウドストレージの大きな利点は、自動バックアップとバージョン管理が標準機能として含まれている点です。
✅ クラウドバックアップの特徴:
- 自動バージョン管理:更新履歴の保持、任意の時点に復元可能
- マルチリージョンでのデータ保管:地理的な分散保存
- 追加費用なし:月額料金に含まれる
主要サービスのバージョン保持期間:
| サービス | バージョン保持期間 | 削除ファイルの復元期間 |
|---|---|---|
| Google Workspace | 30日〜永久(プランによる) | 30日 |
| Microsoft 365 | 30日〜 | 93日 |
| Dropbox Business | 180日〜(プランによる) | 180日〜 |
ハイブリッド運用のバックアップ戦略
NASとクラウドを組み合わせた多重バックアップが、最も安全性の高い運用方法です。
💡 推奨バックアップ戦略(3-2-1ルール):
- 3つのコピーを保持する
- 2種類の媒体に保存する(NAS+クラウド)
- 1つは遠隔地に保管する(クラウド)
ハイブリッド運用の追加コスト
基本的なNAS運用に加えて、クラウドバックアップを追加する場合の費用:
| NASデータ容量 | 必要なクラウド容量 | 追加月額コスト目安 |
|---|---|---|
| 500GB | 500GB〜1TB | 約900〜1,800円 |
| 2TB | 2TB | 約1,800〜3,000円 |
| 4TB | 4〜5TB | 約3,000〜5,000円 |
この追加コストで、災害やランサムウェア攻撃からの完全な保護が実現できるため、重要データを扱う企業には強く推奨されます。
NASとクラウドの容量別コスト比較
必要なデータ容量は、ストレージ選びの重要な判断材料です。容量別に最適な選択肢と、具体的なコストを見ていきましょう。
500GB未満の場合
小規模なデータ量であれば、クラウドストレージがおすすめです。この容量帯では、クラウドの利便性が大きなメリットとなります。
✅ クラウドストレージを選ぶ理由:
- 初期費用ゼロで導入できる
- 月額費用が比較的安価(1ユーザー900〜2,000円程度)
- 自動バックアップ機能ですぐに運用開始できる
- 容量の増減が自由自在で必要に応じて調整可能
Google WorkspaceやMicrosoft 365などの主要サービスでは、基本プランで1TB前後の容量が提供されており、小規模事業者にとって十分な容量です。
⚠️ 注意点:ユーザー数が多い場合は総コストの確認が必要です。また、年間契約にすると月額料金が10〜20%割引されることが多いため、長期利用を前提にするなら年間契約も検討しましょう。
500GB〜2TBの場合
この容量帯は、利用目的やアクセス方法によって選択が分かれます。社内でのアクセスが主であればNAS、場所を問わないアクセスが必要ならクラウドストレージの検討をおすすめします。
NASを選ぶ場合の費用
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 初期費用 | 6〜10万円(本体+設定) |
| 月額費用 | 約450〜1,100円(電気代のみ) |
| 2年間総コスト | 約7〜12万円 |
クラウドを選ぶ場合の費用(5ユーザー想定)
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 初期費用 | 0円 |
| 月額費用 | 約8,800〜13,200円(1,760〜2,640円×5人) |
| 2年間総コスト | 約21〜32万円 |
この容量帯では、利用人数が5人以上になるとクラウドストレージの月額コストが増加するため、NASの方が長期的なコスト面で有利になることが多いです。一方、テレワークや外出先からのアクセスが頻繁な場合は、クラウドストレージの利便性を優先する企業も多くなっています。
2TB〜4TBの場合
この容量帯になると、長期運用を考えた場合、NASの方がコストメリットが大きくなります。特に写真・動画などの大容量データを扱う企業は、NASの導入を強くおすすめします。
NASを選ぶ具体的なメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 12〜17万円(本体+HDD) |
| 月額費用 | 約450〜650円(電気代) |
| 2年間総コスト | 約13〜18万円 |
| 5年間総コスト | 約15〜20万円 |
クラウドを選ぶ場合の費用(5ユーザー想定)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 0円 |
| 月額費用 | 約13,750円(2,750円×5人・Business Plus) |
| 2年間総コスト | 約33万円 |
| 5年間総コスト | 約82.5万円 |
⚠️ 重要なコスト差:4TBクラスのNASの場合、5年間運用した場合の総コストは約20万円程度になります。一方、同容量のクラウドストレージを5人で利用した場合、5年間では約82.5万円もの費用が発生します。その差は約62.5万円に達します。
💡 選ぶ際のポイント:
- 信頼性の高いメーカー製品を選ぶ(Buffalo、Synology等)
- RAID機能搭載でデータ冗長性を確保する
- 将来的な拡張性も考慮して選定する
5年間の総コスト比較(TCO)
**総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)**の視点で、NASとクラウドを比較すると、長期運用における経済性の違いが明確になります。
4TBデータを5ユーザーで利用する場合の5年間TCO
| コスト項目 | NAS(Synology DS425+) | クラウド(Google Workspace) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 約16.8万円 | 0円 |
| 電気代(5年) | 約3.8万円 | 0円 |
| 月額料金(5年) | 0円 | 約82.5万円 |
| 合計(5年) | 約20.6万円 | 約82.5万円 |
| 差額 | − | +約61.9万円 |
この比較から、データ容量が2TB以上かつ長期運用を前提とする場合、NASの経済的優位性は圧倒的であることがわかります。ただし、この計算には以下の要素が含まれていない点に注意が必要です。
📋 TCO計算に含まれていない要素:
- NASの保守・故障時の交換費用
- クラウドの自動バックアップ・バージョン管理の価値
- リモートアクセスの利便性
- 管理工数(人件費)
これらの要素を含めて総合的に判断することが重要です。
NASとクラウドストレージどっち?業務形態別の選び方
働き方が多様化する中、データへのアクセス方法や共有の仕方は、業務形態によって大きく異なります。それぞれの業務スタイルに適したストレージの選び方を解説します。
オフィスワーク中心の企業
社員の大半がオフィスで勤務し、社内でのファイル共有が中心の場合は、NAS導入がおすすめです。特に大容量データを扱う機会が多い業務では、NASの特徴を最大限活かせます。
✅ NASが最適な理由:
- 社内LANを使用した高速データ転送で業務効率アップ
- 通信料金や回線速度を気にせず大容量ファイルを扱える
- 長期運用でのコストメリットが大きい
- オフライン環境でも利用可能で業務継続性が高い
運用を成功させるポイントは、共有フォルダの適切なアクセス権限設定です。部署やプロジェクト単位でフォルダを分け、必要な人だけがアクセスできるよう設定しましょう。また、定期的なバックアップと停電対策(UPSの設置)も重要です。
リモートワーク・在宅勤務を含む企業
働く場所が分散している場合、クラウドストレージの導入を強く推奨します。いつでもどこでも同じように仕事ができる環境が必要だからです。
✅ クラウドストレージが最適な理由:
- 場所を問わないアクセス環境でどこからでも同じように作業可能
- デバイスを選ばない利用のしやすさ(PC、スマホ、タブレット対応)
- 自動同期によるデータの一元管理で最新状態を維持
- セキュリティ設定が容易で社外でも安全に利用できる
在宅勤務環境でのクラウドストレージ活用では、アクセス権限の適切な設定が特に重要です。誰がどのファイルにアクセスできるかを明確にし、社内ルールの明確化をしておきましょう。
取引先とのデータ共有が多い企業
社外の関係者と頻繁にデータをやり取りする業務では、クラウドストレージの利用が効率的です。セキュリティを確保しながら、スムーズな共有が可能だからです。
| 業務内容 | 推奨ストレージ | 具体的な活用方法 |
|---|---|---|
| 資料の受け渡し | クラウド | ・期限付きリンクでの共有 ・パスワード保護の活用 ・更新通知の設定 |
| 共同作業 | クラウド | ・リアルタイム共同編集 ・バージョン管理 ・コメント機能の活用 |
| 大容量データ共有 | NAS+クラウド | ・NASで保管+クラウドで共有 ・アクセス履歴の管理 ・容量制限の設定 |
取引先との共有ではセキュリティとトレーサビリティが重要です。誰がいつファイルにアクセスしたかを記録し、必要に応じて共有設定を変更できるようにしておきましょう。
NASとクラウドの併用パターン
最近の傾向として、NASとクラウドストレージを併用するハイブリッド運用が注目されています。それぞれの強みを活かしながら、弱みを補完する柔軟なデータ管理方法です。
💡 ハイブリッド運用のメリット:
- コスト最適化:必要なユーザーだけクラウド契約することで総コストを抑制
- セキュリティ強化:機密データはNASに、共有データはクラウドに分けて保管
- データ保護の多重化:NASデータをクラウドにバックアップし、災害時のリスク分散
- アクセス環境の柔軟化:業務内容に合わせた最適なアクセス方法の選択が可能
業務別のハイブリッド構成例
| 業務形態 | NASの役割 | クラウドの役割 |
|---|---|---|
| 社内業務中心型 | 基幹データの保管、大容量ファイルの保管、システムバックアップ | 社外アクセスするデータ、取引先との共有データ、チーム間の共同編集ファイル |
| リモートワーク中心型 | 機密データの保管、大容量アーカイブ、統合バックアップ | 日常的な業務データ、チーム間共有ファイル、プロジェクト管理データ |
| 取引先連携型 | 社内機密データの保管、高速データ処理、一次バックアップ | 取引先との共有フォルダ、承認フロー書類、外部公開コンテンツ |
ハイブリッド運用を成功させるには、データの分類と保存場所の明確なルール化が不可欠です。例えば「機密性の高いデータはNASで保管」「共有頻度の高いデータはクラウドに配置」といったルールを設け、社内に周知しましょう。
NASとクラウドストレージのセキュリティ対策
データは企業の重要な資産です。適切な保護とバックアップ体制の構築は、ストレージ選びの重要なポイントとなります。それぞれの特徴と対策方法を詳しく解説します。
データ消失リスクへの対策
データを失うリスクは、NASとクラウドで異なる特徴を持ちます。それぞれの対策方法を理解しておきましょう。
NASのリスクと対策
⚠️ 主なリスク:
- ハードディスク故障:RAID機能で複数ディスクに分散保存することで1台の故障ではデータを失わない仕組みを構築できます
- 機器の故障:定期的な外部メディアへのバックアップが重要です
- 災害・盗難:オフサイトバックアップ(別の場所にデータを保管)を実施しましょう
- 人的ミス:ファイル履歴機能を活用し、以前のバージョンに復元できる環境を整えます
クラウドのリスクと対策
⚠️ 主なリスク:
- アカウント乗っ取り:二段階認証を必ず有効化し、強力なパスワード管理を徹底しましょう
- 誤操作:自動バックアップとバージョン管理機能を活用すれば、操作ミスからの復旧が容易になります
- サービス停止:サービス障害に備え、定期的なローカルバックアップを取得しておきます
- 同期ミス:同期状態を定期的に確認し、トラブルを早期発見することが重要です
情報漏洩対策の比較
| セキュリティ項目 | NAS | クラウドストレージ |
|---|---|---|
| アクセス制御 | IPアドレス制限、ユーザー認証、フォルダ権限設定 | 二段階認証、デバイス制限、詳細な権限設定 |
| 通信暗号化 | VPN接続が必要、SSL/TLS設定が必要 | 標準で暗号化通信、追加設定不要 |
| データ暗号化 | 手動設定が必要、専門知識が必要 | 自動暗号化、暗号化レベル選択可 |
| アクセスログ | 基本的なログのみ、解析は手動 | 詳細なログ、異常検知機能付き |
NASは閉じた環境での運用に強みがありますが、社外からのアクセスや高度なセキュリティ機能を実現するには専門的な設定が必要です。一方、クラウドストレージは標準で高度なセキュリティ機能を備えていますが、データが外部に存在するため、サービス提供者の信頼性確認が重要になります。
ランサムウェアなどのサイバー攻撃が高度化しているため、どちらの選択肢でも多層的な防御が不可欠です。特に重要データは、単一の保存方法に依存せず、複数の方法で保護することをおすすめします。
バックアップ方法の違い
NASのバックアップ方式
🔄 主なバックアップ方法:
- 内蔵HDDの冗長化(RAID構成):RAID 1(ミラーリング)、RAID 5/6(パリティ保護)
- 外付けHDDへの定期バックアップ:週次・月次での自動バックアップ
- 別のNASへの自動バックアップ:遠隔地の別NASへレプリケーション
- クラウドバックアップ(ハイブリッド方式):重要データをクラウドにも保管
クラウドストレージのバックアップ特徴
✅ 標準機能:
- 自動バージョン管理:更新履歴の保持、任意の時点に復元可能
- マルチリージョンでのデータ保管:地理的な分散保存、災害対策として有効
- ローカルキャッシュ:オフラインでも作業可能、同期時に自動バックアップ
データ重要度別のバックアップ戦略
| データ重要度 | NASの場合 | クラウドの場合 |
|---|---|---|
| 重要度:高 | RAID 1/6構成、日次バックアップ、遠隔地保管 | 自動バックアップ、30日以上の履歴保持、ローカル保存 |
| 重要度:中 | RAID 5構成、週次バックアップ、外付けHDD保管 | 自動バックアップ、7日以上の履歴保持 |
| 重要度:低 | RAID 1構成、月次バックアップ | 自動バックアップのみ |
最新のNAS製品(Synology、QNAPなど)はクラウドとの連携機能が強化され、ハイブリッドバックアップが容易になっています。特に業務データの保護には、3-2-1バックアップ戦略(3つのコピー、2種類の媒体、1つは遠隔地)を採用することで、ほぼすべてのデータ消失リスクに対応できます。
おすすめNAS製品とクラウドストレージサービス
小規模企業向けのNAS製品とクラウドサービスを、実際の利用シーンに基づいて比較します。
おすすめNAS製品(Buffalo・Synology)
主要メーカーの特徴比較
| 項目 | Buffalo | Synology |
|---|---|---|
| 価格帯 | 比較的安価 | やや高価 |
| 特徴 | 簡単セットアップ、日本語サポート、故障時の保証が手厚い | 高機能、豊富なアプリ、安定性が高い |
| 向いている企業 | IT管理者不在の企業、シンプルな運用希望 | やや詳しい担当者がいる企業、多機能な活用を希望 |
Buffalo TeraStationシリーズ
手軽に導入できる信頼性の高い製品が特徴です。初期設定が簡単で、日本語マニュアルも充実しています。
| モデル | 容量 | 価格 | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| TS3230DN0202 | 2TB(2ベイ) | 約9.7万円 | 小規模オフィス向け |
| TS3230DN0402 | 4TB(2ベイ) | 約10.7万円 | 小規模オフィス向け |
| TS3430DN0804 | 8TB(4ベイ) | 約15.5万円 | データ量が多い企業向け |
💡 Buffalo選択のメリット:
- 国内メーカーで安心感が高い
- 保守サービスが充実
- 電話サポートが手厚い
- 故障時の交換が迅速
Synology DiskStationシリーズ
高機能で拡張性が高い製品が特徴です。独自OSによる多彩な機能を備えています。
| モデル | ベイ数 | 価格(ディスクレス) | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| DS225+ | 2ベイ | 約5.4万円 | 汎用的な利用向け |
| DS425+ | 4ベイ | 約7.6万円 | 将来の拡張を見据えた利用 |
💡 Synology選択のメリット:
- 独自アプリが充実
- クラウド連携が強力
- 自動バックアップが簡単
- リモートアクセス機能が充実
NAS向けHDDの選び方
SynologyのようなディスクレスNASを導入する場合、HDDの選定とコストがTCOに大きく影響します。NAS用途に最適化された高耐久モデル(CMR方式)であるWestern DigitalのWD Red PlusおよびSeagateのIronWolfが主流です。
| 容量 | メーカー | シリーズ | 実売価格 | 1TBあたり単価 |
|---|---|---|---|---|
| 2TB | Seagate | IronWolf | 約1.3万円 | 約6,700円 |
| 4TB | Seagate | IronWolf | 約1.7〜2.0万円 | 約4,200円 |
| 8TB | Seagate | IronWolf | 約2.3〜3.3万円 | 約2,900円 |
⚠️ 重要:容量単価(1TBあたりの価格)において8TBモデルが最も経済合理的です。筐体のベイ数は物理的な制約があるため、小容量ドライブでベイを埋めてしまうことは、将来の容量拡張コストを増大させる要因となります。
用途別おすすめ構成
| 利用シーン | おすすめ構成 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 単純なファイル共有 | Buffalo TS3230DN(2ベイ) | 設定が簡単、コストパフォーマンスが良い、サポートが充実 |
| 社外からのアクセスが必要 | Synology DS225+ | リモートアクセスが容易、セキュリティが強固、アプリ連携が豊富 |
| 大容量データの保存 | Synology DS425++IronWolf 8TB×4 | 大容量に対応、拡張性が高い、省電力 |
おすすめクラウドサービス
小規模企業向けの主要クラウドストレージサービスを比較します。機能とコスト、それぞれの特徴を詳しく解説します。
| 項目 | Google Workspace | Microsoft 365 | Dropbox Business |
|---|---|---|---|
| 基本容量 | 30GB〜2TB | 1TB | 5TB |
| 月額料金(1ユーザー) | 880円〜 | 900円〜 | 約2,400円〜 |
| 最小契約人数 | 1名〜 | 1名〜 | 3名〜 |
| 特徴的な機能 | Gmail連携、Google文書作成、ビデオ会議 | Office連携、Teams連携、Exchange機能 | 高度な共有機能、パスワード保護、閲覧ログ管理 |
Google Workspace
Google Workspaceは、Googleの総合的なサービスとして、メールや文書作成などオフィス機能が充実しています。企業での導入率が最も高いクラウドサービスの一つです。
| プラン名 | 月額料金 | ストレージ | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| Business Starter | 880円(税抜) | 30GB | 個人事業主レベル |
| Business Standard | 1,760円(税抜) | 2TB | 組織的なデータ管理 |
| Business Plus | 2,750円(税抜) | 5TB | 高度なセキュリティ要求 |
💡 Google Workspaceが向いている企業:
- Gmailを主力で使用している
- Google文書での共同編集を活用したい
- ビデオ会議機能も必要
最初の14日間は無料
Microsoft 365
Microsoft 365は、Microsoft Officeとの連携が強みです。Windows環境との相性が良好です。
| プラン名 | 月額料金(税込目安) | ストレージ | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| Business Basic | 900〜1,100円 | 1TB | Web版Officeで十分な場合 |
| Business Standard | 1,900〜2,200円 | 1TB | デスクトップ版Office必須 |
💡 Microsoft 365が向いている企業:
- Office製品を主に使用
- Windows PCが主力
- Teamsでの連携を検討
Dropbox Business
Dropbox Businessは、ファイル共有に特化した高機能なサービスです。セキュリティと共有機能が充実しています。
| プラン名 | 月額料金(税込目安) | ストレージ | 最小契約人数 |
|---|---|---|---|
| Standard | 約2,400〜2,700円 | 5TB | 3名以上 |
| Advanced | 約3,800〜4,300円 | 15TB〜 | 3名以上 |
💡 Dropbox Businessが向いている企業:
- 大容量データの共有が多い
- 取引先との共有が頻繁
- セキュリティを重視している
用途別おすすめサービス
| 用途 | おすすめサービス | 選定理由 |
|---|---|---|
| 基本的な文書共有 | Google Workspace | 導入コストが低い 操作が簡単 共同編集が便利 |
| 大容量データ共有 | Dropbox Business | 大容量対応 共有機能が充実 セキュリティが強固 |
| Office連携重視 | Microsoft 365 | Office統合 Windowsとの相性 Teams連携 |
NAS導入と運用の手順
ストレージ導入から日常管理、トラブル対応まで、効率的な運用のためのポイントを解説します。
導入時の準備と初期設定
ストレージ導入をスムーズに行うためには、事前の準備が重要です。
📋 導入前に確認すべき項目:
- 現在のデータ総容量(現状より30%増を見込むのが理想的)
- アクセス権限の種類と必要なユーザー数
- バックアップ要件(頻度・世代数・保存期間)
- セキュリティ要件(暗号化レベル・アクセス制限)
NAS導入の手順
- 専用ソフトウェアをインストール(Buffalo製品ならNAS Navigator2、Synology製品ならSynology Assistant)
- NAS本体をLANケーブルでネットワークに接続
- 初期設定ウィザードに従って基本設定を実施
- RAID構成の設定(データ保護にはRAID 1またはRAID 5を推奨)
- 共有フォルダの作成とアクセス権限の設定
- バックアップスケジュールの設定
💡 RAID設定時の目安:
- 重要度の高いデータ:RAID 1(ミラーリング)またはRAID 6
- 一般業務データ:RAID 5
- 可用性より容量を優先:RAID 0(データ保護なし・非推奨)
クラウドストレージ導入の手順
- サービス提供事業者でアカウント作成
- 管理者設定(ユーザー追加・グループ設定)
- 同期クライアントソフトのインストール
- 同期フォルダの設定
- アクセス権限とセキュリティポリシーの設定
- 共有設定のルール策定
⚠️ クラウドストレージ導入時は、インターネット回線速度も重要な要素です。特に大容量データを扱う場合は、十分な上り回線速度を確保しておくことをおすすめします。
日常的な管理方法
効率的な運用には、定期的な管理とルールの徹底が欠かせません。
📅 必須の日常管理タスク:
- 容量使用状況の確認(週1回程度)
- 不要ファイルの整理・削除
- バックアップの実行状況確認
- アクセスログのチェック(セキュリティ対策)
NAS特有の管理ポイント
NASを長期間安定して使用するためには、システム状態の定期確認が重要です。特にHDD健全性は月1回程度のチェックを推奨します。また、ファームウェアの更新も忘れずに行いましょう。
クラウドストレージ特有の管理ポイント
クラウドストレージでは、同期状態の確認が重要です。同期エラーが発生した場合は早期に対処が必要です。また、ユーザーアクセス権限の定期的な見直しも重要なセキュリティ対策となります。
💡 データ管理の効率化テクニック:
- フォルダ構造を統一する(部署別・プロジェクト別など)
- ファイル命名規則を策定する
- アクセス頻度に応じてデータを整理する
- 使用終了したデータをアーカイブする
トラブル時の対処法
どんなシステムでもトラブルは発生します。迅速な対応と復旧手順を知っておくことで、業務への影響を最小限に抑えることができます。
接続トラブルの場合
🔧 対処手順:
- ネットワーク状態を確認(LANケーブル・Wi-Fi接続)
- ルーター/スイッチの再起動
- NASの場合は電源の再起動
- クラウドの場合はサービス稼働状態を公式サイトで確認
動作が遅い場合
🔧 対処手順:
- 利用中のユーザー数を確認
- 大容量ファイルの転送状況を確認
- NASの場合はHDD使用率を確認(90%以上は要注意)
- クラウドの場合はインターネット回線速度を測定
データ復旧が必要な場合
🔧 確認順序:
- バックアップデータからの復元
- NASの場合はRAID復旧機能の利用
- クラウドの場合はバージョン履歴からの復元
- 上記で解決しない場合はデータ復旧サービスの利用検討
⚠️ トラブル予防のポイント:自動アップデート機能を有効化し、定期的なシステムチェックを実施しましょう。また、ハードウェア寿命を考慮した更新計画と、緊急時対応手順書の作成・共有も重要です。
よくある質問と回答
- NASとクラウドストレージはどちらが長期的にコスト効率が良いですか?
-
データ容量2TB以上かつ5年以上の長期運用では、NASが圧倒的に経済的です。4TBで5ユーザーの場合、5年間でNAS約20万円に対しクラウド約82万円と、約60万円以上の差が生じます。
- NASの電気代はどれくらいかかりますか?
-
機種により大きく異なります。旧型Buffalo(TS3220DN)は年間約1.3万円、新型(TS3230DN)は約5,400円、Synology DS225+は約4,600円です。5年間で最大4万円以上の差が出るため、省電力モデルの選択が重要です。
- クラウドストレージのコストを抑える方法はありますか?
-
年間契約で10〜20%割引、必要なユーザーのみ契約、プランの適正配置(StandardとBasicの併用)、容量の定期見直しが効果的です。
- どちらが情報漏洩リスクが低いですか?
-
適切に設定すれば両者とも安全です。NASは社内完結でセキュアですが設定に専門知識が必要、クラウドは標準で高度なセキュリティ機能がありますがデータは外部に存在します。重要データは両方を併用した多重保護が推奨されます。
- 専門知識がなくても導入・運用できますか?
-
Buffalo NASは日本語サポートと簡単セットアップで専門知識不要です。クラウドサービスも基本的に設定は簡単ですが、セキュリティ設定は慎重に行う必要があります。
- NASとクラウドの併用は効果的ですか?
-
非常に効果的です。機密データはNASで保管、共有データはクラウドで管理、NASデータをクラウドにバックアップすることで、コスト・セキュリティ・利便性のバランスが最適化されます。
まとめ:費用とニーズで選ぶストレージ戦略
自社の予算、データ容量、アクセス方法、セキュリティ要件を総合的に判断し、最適なストレージを選択することが重要です。初期費用だけでなく、電気代などのランニングコストを含めた総所有コスト(TCO)で比較することで、長期的に最もコストパフォーマンスの高い選択ができます。
💡 選択のポイント:
- 予算と費用:NASは初期費用(6〜15万円)が高いが月々は電気代のみ、クラウドは初期費用なしだが月額料金が継続的に発生
- 必要なデータ容量:2TB未満はどちらも選択可能、2TB以上はNASが費用対効果で優位
- アクセス方法:社内LANでの高速アクセスならNAS、場所を問わないアクセスならクラウド
- セキュリティ要件:NASは自社管理でカスタマイズ可能、クラウドは専門事業者による高度な対策
コストに敏感な小規模事業者はNAS、場所を問わない柔軟な働き方を重視する企業はクラウド、データ保護と利便性の両立を求める企業はハイブリッド運用が適しています。特に重要なのは、電気代を含めた5年間のTCOで判断することです。
