「また更新通知が来ている…」と思いながらも、いつ何が起こるかわからない不安を抱えつつ、保守作業を後回しにしていないだろうか。自社で対応しようにも時間が取れず、かといって外注するにも費用感がまったくわからない。そんな状態で判断を先延ばしにしているWEB担当者は多い。
WordPressは世界で最も普及しているCMSだが、その分攻撃者の標的になりやすいという現実がある。保守を怠った結果、復旧に数十万円かかるケースも珍しくない。
この記事では、複数の保守サービス調査と公的機関のデータをもとに、以下を解説する:
- 📊 月額費用・初期費用・単発依頼の具体的な相場
- ⚖️ 外注すべきか自社対応すべきかの判断基準
- 🔍 フリーランスと制作会社の違いと選び方
読み終えれば、自社に必要な保守レベルと適正な費用感が明確になり、根拠を持って意思決定できるようになる。
結論から言えば、WordPress保守費用は月額5,000円〜50,000円と幅広い。この差がどこから生まれるのか、そして自社はどの価格帯を選ぶべきなのか——その答えがこの記事にある。
なぜWordPress保守が必要なのか
WordPressは世界で最も利用されているCMSだが、その普及率の高さゆえに攻撃者の標的になりやすいという側面を持つ。保守を怠ることで、セキュリティ侵害やサイトダウンといった深刻な問題につながるリスクがある。
セキュリティリスクと攻撃の実態
WordPressは国内CMS市場で80%以上のシェアを持ち、上場企業だけでも約5,000サイトが稼働している。このシェアの高さが、悪意ある攻撃者にとって「効率的な攻撃対象」となる理由だ。
WordPressが狙われやすい理由:
- オープンソースであり、ソースコードが公開されているため脆弱性が発見されやすい
- プラグインの脆弱性を突いた攻撃が多発している
- 古いバージョンのまま放置されたサイトが多数存在する
実際に、WordPressサイトへの攻撃手法として多いのは、プラグインやテーマの脆弱性を突いた不正アクセス、ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)によるログイン突破、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどがある。
アップデートを放置した場合に起こること
WordPressの本体、プラグイン、テーマは定期的にアップデートが提供される。これらのアップデートにはセキュリティパッチが含まれていることが多く、放置すると既知の脆弱性がそのまま残った状態になる。
アップデートを放置した場合のリスク:
- マルウェア感染:サイトが改ざんされ、訪問者にウイルスを配布する踏み台にされる
- 情報漏洩:顧客情報や管理者情報が外部に流出する
- SEO評価の低下:Googleがマルウェア感染サイトとして警告を表示し、検索順位が急落する
保守を怠った場合の具体的な影響
保守を行わないことで発生する影響は、セキュリティ面だけにとどまらない。
| 影響範囲 | 具体的な問題 |
|---|---|
| セキュリティ | 不正アクセス、データ改ざん、情報漏洩 |
| サイト機能 | プラグインの互換性エラー、表示崩れ、機能停止 |
| ビジネス | サイトダウンによる機会損失、信頼低下、復旧コストの発生 |
| SEO | 検索順位の低下、インデックス削除 |
特に深刻なのは、問題が発生してからの復旧コストだ。日常的な保守費用を惜しんだ結果、マルウェア除去や完全復旧に数十万円の費用がかかるケースも珍しくない。
WordPress保守費用の相場と料金体系
WordPress保守サービスの費用は、対応範囲によって大きく異なる。ここでは、月額費用、初期費用、単発依頼の相場をそれぞれ解説する。
月額費用の価格帯別サービス内容
WordPress保守の月額費用は、サービス内容によって5,000円〜50,000円以上まで幅がある。
| 価格帯 | 主なサービス内容 | 想定される利用者 |
|---|---|---|
| 5,000〜10,000円 | バックアップ、WordPress本体の自動アップデート | 小規模サイト、最低限の保守で十分な場合 |
| 10,000〜20,000円 | 上記+プラグイン・テーマのアップデート、基本的なセキュリティ対策 | 中小企業のコーポレートサイト |
| 20,000〜40,000円 | 上記+脆弱性診断、死活監視、障害対応、サポート対応 | ECサイト、会員サイトなど重要度の高いサイト |
| 40,000円以上 | 上記+24時間監視、即時対応、コンテンツ更新代行、SEOレポート | 大規模サイト、ミッションクリティカルなサイト |
注意点として、5,000円程度の低価格プランでは、障害対応やサポートがオプション扱いになっていることが多い。基本料金だけで判断せず、実際に必要なサービスを含めた総額で比較することが重要だ。
初期費用の有無と相場
保守サービスの初期費用は、無料〜50,000円程度が相場となっている。
初期費用が発生する理由:
- 現状診断:サイトのセキュリティ状態やバージョン確認
- 環境構築:バックアップ体制や監視システムの設定
- テスト環境の構築:アップデートテスト用のステージング環境作成
初期費用が無料の業者もあるが、その場合は月額費用に上乗せされているか、初期診断が簡易的である可能性がある。中長期で契約する前提であれば、初期費用よりも月額費用の内容を重視すべきだ。
単発依頼の費用相場(バージョンアップ・トラブル対応)
月額契約ではなく、必要なときだけ依頼する単発対応の相場は以下の通りだ。
| 作業内容 | 費用相場 |
|---|---|
| WordPress本体のバージョンアップ | 10,000〜30,000円 |
| プラグイン・テーマのアップデート | 5,000〜20,000円 |
| PHPバージョンアップ | 30,000〜100,000円 |
| マルウェア除去・復旧 | 50,000〜200,000円 |
| バックアップからの復元 | 20,000〜50,000円 |
単発依頼は一見割安に見えるが、トラブル発生時の費用が高額になる傾向がある。年間を通じて複数回の作業が発生する場合は、月額契約のほうがコストを抑えられるケースが多い。
費用に差が出る要因
同じ「WordPress保守」でも、業者によって費用に差が出る主な要因は以下の通りだ。
費用に影響する要素:
- サイトの規模:ページ数が多いほど確認・テスト工数が増える
- プラグインの数:管理対象が増えるほど費用が上がる
- サポート体制:電話対応の有無、対応時間(平日のみ/24時間)
- 対応速度:緊急時の即時対応を求めるかどうか
- レポートの有無:月次報告書の作成有無
WordPress保守サービスに含まれる作業内容
保守サービスで実際にどのような作業が行われるのかを理解しておくことで、自社に必要なサービスを見極めやすくなる。
アップデート対応(本体・プラグイン・テーマ)
WordPress保守の中核となる作業がアップデート対応だ。
アップデートの種類:
- WordPress本体:年3〜4回のメジャーアップデート、随時のマイナー(セキュリティ)アップデート
- プラグイン:各プラグインごとに月1回〜数回程度
- テーマ:年数回程度(テーマによる)
単純にアップデートボタンを押すだけでなく、テスト環境での事前確認や互換性チェックが重要になる。アップデート後に表示崩れや機能停止が発生するケースがあるため、本番環境に適用する前のテストが欠かせない。
バックアップと復旧対応
定期的なバックアップは、万が一の際にサイトを復元するための保険となる。
バックアップの対象:
- データベース:投稿、固定ページ、設定情報など
- ファイル:テーマ、プラグイン、アップロードした画像など
保守サービスでは、日次や週次での自動バックアップに加え、バックアップからの復元対応も含まれることが一般的だ。復元作業は技術的な知識が必要なため、自社対応が難しい部分でもある。
セキュリティ対策と脆弱性診断
セキュリティ対策として、保守サービスでは以下のような作業が行われる。
主なセキュリティ対策:
- ファイアウォール設定:不正アクセスのブロック
- ログイン保護:ブルートフォース攻撃対策、二段階認証の導入
- 脆弱性スキャン:既知の脆弱性がないか定期的にチェック
- マルウェアスキャン:不正なコードが埋め込まれていないか監視
特に脆弱性診断は、プロのツールや知見がないと見落としが発生しやすい領域だ。
障害監視とトラブル対応
障害監視(死活監視)とは、サイトが正常に稼働しているかを24時間体制で監視する仕組みだ。
監視内容の例:
- サーバー応答の確認:サイトがダウンしていないかチェック
- SSL証明書の有効期限監視:期限切れによる警告表示を防止
- 異常検知時のアラート:問題発生時に即座に通知
トラブル発生時には、原因の特定と復旧作業を行う。対応時間や連絡手段は業者によって異なるため、契約前に確認しておくべきポイントだ。
サポート・レポート提供
保守サービスには、技術的な相談に対応するサポート窓口が含まれることが多い。
サポートの形態:
- メールサポート:ほぼすべての業者で提供
- 電話サポート:対応している業者は限定的
- チャット・Slack対応:一部の業者で提供
また、月次で保守レポートを提出する業者もある。アップデート履歴、バックアップ状況、セキュリティスキャン結果などがまとめられており、社内報告や監査対応に活用できる。
WordPress保守を外注すべきか判断するポイント
保守を外注するか自社で対応するかは、スキル・工数・リスク許容度のバランスで判断する。
自社対応に必要なスキルと工数
WordPress保守を自社で行う場合、以下のスキルと工数が必要になる。
必要なスキル:
- WordPress管理画面の操作:基本的な操作スキル
- FTP/SSHによるファイル操作:テーマやプラグインの手動更新、復旧作業
- データベースの基礎知識:バックアップ・復元、エラー対応
- PHPの基礎知識:エラーログの読み解き、簡易的な修正
- セキュリティの知識:脆弱性情報の収集、対策の実施
工数の目安:
- 日常的な監視・確認:週1〜2時間程度
- アップデート作業:月2〜4時間程度(テスト含む)
- トラブル対応:発生時に数時間〜数日(内容による)
自分で保守する場合の作業内容と手順
自社で保守を行う場合の基本的な作業フローは以下の通りだ。
🔄 定期作業(週次〜月次)
- WordPress管理画面にログインし、アップデート通知を確認
- バックアップを取得(手動またはプラグインで自動化)
- テスト環境でアップデートを適用し、動作確認
- 問題なければ本番環境にアップデートを適用
- サイト全体の表示・機能を確認
⚠️ 緊急時の対応
- サイトにアクセスできない場合は、サーバーの稼働状況を確認
- エラーログを確認し、原因を特定
- バックアップから復元、または問題箇所を修正
- 再発防止策を検討・実施
自社対応で活用できるツール・プラグイン
自社で保守を行う場合、以下のツール・プラグインが役立つ。
📦 バックアップ系
- UpdraftPlus:定期バックアップと復元機能を備えた定番プラグイン
- BackWPup:外部ストレージへの自動バックアップが可能
🔒 セキュリティ系
- Wordfence Security:ファイアウォール、マルウェアスキャン、ログイン保護
- SiteGuard WP Plugin:日本製のセキュリティプラグイン、管理画面保護に強み
📊 監視・管理系
- WP Mail SMTP:メール送信の信頼性向上
- Health Check & Troubleshooting:サイトの健全性チェック
ただし、プラグインを導入しても運用するのは人間だ。定期的な確認作業や、異常発生時の対応は自社で行う必要がある。
外注が適しているケース
以下のような状況であれば、外注を検討すべきだ。
✅ 外注推奨のケース
- WEB担当者が他業務と兼任で、保守に時間を割けない
- 社内にWordPressの技術的な知識を持つ人材がいない
- サイトがビジネスの中核であり、ダウンタイムが許容できない
- 過去にセキュリティ事故や表示トラブルを経験したことがある
- コンプライアンス上、外部の専門家による管理が求められる
サイトの重要度が高いほど、問題発生時のリスクも大きくなる。「何かあったときに対応できるか」を基準に判断するとよい。
自社対応が適しているケース
一方、以下のような状況であれば自社対応も選択肢になる。
✅ 自社対応が可能なケース
- 社内にWordPress経験者がいる
- サイトの構成がシンプルで、プラグイン数も少ない
- サイトが一時的に停止しても業務への影響が限定的
- 技術的なトラブル対応を学ぶ意欲と時間がある
ただし、いざというときの外注先は事前に確保しておくことを推奨する。自社で手に負えないトラブルが発生したときに、すぐに相談できる業者を知っておくだけでも安心感が違う。
WordPress保守業者の選び方
外注を決めた場合、どのような基準で業者を選ぶべきか解説する。
フリーランスと制作会社の違い
WordPress保守の委託先として、フリーランスと制作会社の2つの選択肢がある。
| 項目 | フリーランス | 制作会社 |
|---|---|---|
| 費用相場 | 5,000〜20,000円/月 | 20,000〜50,000円/月 |
| 対応速度 | 個人のスケジュールに依存 | 組織として対応可能 |
| 継続性 | 廃業・連絡不通リスクあり | 比較的安定 |
| 柔軟性 | 相談しやすい、融通が利く | 契約範囲内での対応 |
| 技術力 | 個人差が大きい | 一定水準を担保 |
フリーランスの注意点:
- 連絡が取れなくなるリスク:体調不良や廃業で突然連絡が途絶えるケースがある
- バックアップ体制:担当者が1人のため、対応できない期間が発生する可能性
制作会社の注意点:
- 担当者の異動:引き継ぎで対応品質が変わる可能性
- 費用が高め:組織運営のコストが上乗せされる
小規模サイトでコストを抑えたい場合はフリーランス、継続性や対応体制を重視する場合は制作会社が向いている。
対応範囲と料金の透明性を確認する
業者を比較する際は、何が基本料金に含まれ、何がオプションかを明確に確認する。
📋 確認すべき項目
- アップデート対応の範囲(本体のみ/プラグイン・テーマ含む)
- バックアップの頻度と保存期間
- 障害対応が基本料金に含まれるか
- サポートの回数制限や対応時間
- レポート提出の有無
「月額10,000円」と表示されていても、障害対応が別料金で1回30,000円といったケースもある。見積もり時に想定されるケースを伝え、総額を確認しておくことが重要だ。
緊急時の対応体制を確認する
サイトがダウンした場合や、セキュリティ侵害が発生した場合の対応体制は事前に確認しておくべきだ。
🚨 確認ポイント
- 緊急連絡の手段(電話/メール/チャット)
- 対応可能な時間帯(平日のみ/土日対応/24時間)
- 初動対応までの目安時間
- 復旧作業の費用(基本料金内/別途見積もり)
「24時間対応」と謳っていても、実際は翌営業日対応という業者もある。契約前にシミュレーションとして「土曜の夜にサイトがダウンしたら、いつ・どう対応してもらえるか」を質問してみるとよい。
契約条件と最低契約期間を確認する
保守契約には最低契約期間が設けられていることが多い。
📝 確認すべき契約条件
- 最低契約期間(3ヶ月/6ヶ月/1年など)
- 解約時の違約金の有無
- 支払い方法(月払い/年払い)と割引の有無
- 契約更新の方法(自動更新/都度確認)
年払いで割引が適用される場合もあるが、サービス品質を確認してからの契約が望ましい。可能であれば、最初の数ヶ月は月払いで契約し、問題なければ年払いに切り替えるという方法もある。
よくある質問
- WordPress保守は自分でもできる?
-
技術的な知識があれば可能だ。ただし、アップデートによる不具合対応やセキュリティ事故への対処には専門知識が求められる。自社で対応する場合も、緊急時に相談できる外注先を確保しておくことを推奨する。
- 保守契約なしで運用するリスクは?
-
セキュリティ侵害、サイトダウン、データ消失のリスクが高まる。問題発生後の復旧費用は、月額保守費用の数倍〜数十倍になることも珍しくない。
- フリーランスに依頼しても大丈夫?
-
小規模サイトであれば選択肢になる。ただし、連絡が途絶えるリスクや、対応できない期間が発生する可能性を考慮し、実績や評判を事前に確認することが重要だ。
- 保守費用は経費として計上できる?
-
通常の業務委託費用として経費計上が可能だ。勘定科目は「外注費」「業務委託費」「支払手数料」などが一般的。詳細は顧問税理士に確認することを推奨する。
- 制作会社に保守も一緒に頼むべき?
-
サイトを制作した会社であれば、構成を理解しているためスムーズに対応できるメリットがある。ただし、保守専門業者のほうが費用・サービス面で優れているケースもあるため、比較検討する価値はある。
- 最低契約期間はどのくらいが一般的?
-
3ヶ月〜1年が一般的だ。初めて契約する場合は、短期間で試せる業者を選ぶか、最低契約期間がない業者を選ぶとリスクを抑えられる。
まとめ
WordPress保守費用の相場は、基本的な保守で月額5,000〜20,000円、セキュリティ対策や障害対応を含む標準的な保守で月額20,000〜40,000円が目安となる。費用だけでなく、対応範囲・緊急時の体制・契約条件を総合的に比較することが重要だ。
外注か自社対応かの判断は、社内のスキル・工数・サイトの重要度で決まる。自社対応が難しい場合や、サイトダウンのリスクを許容できない場合は、専門業者への委託を検討すべきだろう。業者選びでは、フリーランスと制作会社の特性を理解し、自社の状況に合った委託先を選ぶことが成功の鍵となる。
【参考情報】
